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| 小児科医である上田憲さんによる身近な病気(子供から大人まで)のお話 |
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| 第14回 |
| ≪第29号 1998.4.1発行号より≫ |
熱性痙攣
やっと今年のインフルエンザも終了の時期となりました。高熱を来し、熱性痙攣をおこして救急車のお世話になった方もいるかと思います。そこで今回は、熱と痙攣についてのお話です。
「こんな高い熱で頭がおかしくなりませんか?」「痙攣でどうにかなってしまいませんか?」この両者は、お母さん方からよく聞かれます。熱の原因が脳炎や、髄膜炎などの脳の病気であれば、そのために後遺症が残る可能性がありますが、熱そのもので頭がおかしくなることはありません。また、痙攣も長時間続けば、その後遺症が残ったり、呼吸障害のために命にかかわる事態も起こり得ますが、熱性痙攣のように数分以内におさまるような場合は心配ありません。
痙攣の原因はいろいろですが、熱性痙攣は乳幼児では5〜8%程度に見られ、痙攣の原因としては圧倒的に1番目です。これは家族性の事が多く、高熱にともなって左右対称に手足をつっぱったり、曲げ伸ばしをし、目は真上につりあがった状態となります。普通3、4分で治まり、その後はぐっすり眠ってしまいます。そして5、6歳頃にはおこらなくなる、良性の病気ですが、少数ですがてんかんに移行する例もみられます。痙攣も熱と同様に原因によっては後遺症が残ったり、命にかかわる事態となりますが、10分続くようなら原因に関わらず止める必要があります。痙攣が起こると、びっくりしてあわててしまうことが多いのですが、熱性痙攣ではここまで続くことはまれなので、嘔吐した食べ物を誤飲しないように顔を横にして様子を見て下さい。そして10分続くなら病院へいって治療を受けて下さい。
典型的な熱性痙攣では検査もいりませんが、症状が違ったり、熱性痙攣でも回数が多い場合は脳波などの検査が必要となります。 |
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| 第13回 |
| ≪第28号 1998.1.1発行号より≫ |
風邪
「風邪ですか」。私の診療所でも最も多い質問ですが風邪って何でしょう?わが国では風邪症候群といって、いわゆる鼻風邪からインフルエンザ、RSウィルス、マイコプラズマ肺炎、溶連菌感染症など気道系感染症をひっくるめての診断名として使われることが多いようです。また場合によってはおなかの風邪と称してロタウィルスやアデノウィルスの急性腸炎すら含む人もいます。
一方、欧米の教科書では風邪はcoldとして鼻風邪(日本では普通感冒)のみをさし、上記のような他の気道感染症は、発熱や全身倦怠感、咳などの症状が強いので、風邪とはせずに各々の正確な病名で区別しているようです。風邪はライノウィルスとコロナウィルスが主な原因ウィルスで、無治療でも一週間程度で軽快するとされています。インフルエンザなどはfluといわれ、風邪とは全く別の物として扱われているわけです。ましてや、ウィルス性の胃腸炎を風邪とすることなどありません。
私も、このようにできるだけ正確に区別して診断することに全く賛成で、実際もそのように対応しています。症状も予後も全く違うような病気を、『じっぱひとからげ』のような診断では、同じ病名なのに毎回経過が大きく異なったりします。重症になって入院でもすれば、風邪と言ったのにこんな事になってと患者さんの不信感をかいます。
したがって、「風邪ですか」と質問されても「ああそうでしょう」とは安請け合い出来かねます。「そう、風邪でしょうね」というと一言で診察の説明が終わって楽なのですが、「今の所は風邪ともいえません」としか言えないことも多いのです。中途半端な答(診断)だと思われるかもしれませんが、私達医療関係者からみると、安易に「風邪です」というよりずっと良心的な対応なのです。2、3日経過をみれば、もう少し整理された診断と治療につながるので、一般状態が悪くないならあせらずにあせらずに様子をみるのが最良です。 |
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| 第12回 |
| ≪第20号 1996.1.1発行号より≫ |
ウィルス性胃腸炎
北風が吹く寒い季節となりました。このような季節がやってくると流行する病気に、ウィルス性胃腸炎があります。ロタウィルスが最も有名で、乳幼児がかかると嘔吐にともなう白色の水様下痢便が特徴的です。熱がでることもあり、嘔吐と下痢を上手に対処しないと脱水症状で入院することも稀ではありません。
主治医にかかって診断と指示をあおぐのが最も良いのですが、夜間や旅行先でおこった時のために今回は応急の対処法をお教えします。ただし一日たっても治まって来ないときは診察をやはり受けましょう。
嘔吐が先のことが多いので、この時は一旦お菓子や食事をとめて水分の補給のみにしてください。飲み物もジュースや牛乳はやめて、お番茶、水、ポカリスエットや小児用の経口飲料などをごく少量からはじめて、嘔吐がなければ15分おき位に繰り返し、徐々に量を増やして下さい。嘔吐したら1時間位水分も一服するとおさまってきます。水分を増量しても大丈夫になったら、おかゆやうどんのようなおなかの負担の少ない食事を少しづつ開始しましょう。3、4日目位に普通食にもどしていくようなペースで、それまでは食事内容も制限して下さい。
ウィルスの経口感染なので、兄弟や保育園、幼稚園では2〜5日の潜伏期で次から次へと患者が広がります。十分良くなって主治医の許可をもらってから登園してください。またロタウィルス以外にもウィルス性の胃腸炎があって、場合によっては大人でも感染するので、お子さんのお世話の後は厳重に手洗を行いましょう。 |
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| 第11回 |
| ≪第27号 1997.10.1発行号より≫ |
鼻血
鼻出血、いわゆる「鼻血」は子供では良く見かける症状です。鼻の穴をティッシュペーパーでおさえながら、血だらけになってあわてて来院したり、鼻の穴につめものをして取りあえず止めて来院することが多いのですが、夜におこることが多いのも、おおあわてになる理由の一つでしょう。また、繰り返し鼻血がでるので、何か悪い病気(恐らくテレビで見たことのある白血病をイメージして)を心配して来院させることもよく見受けられます。
鼻出血は、鼻の穴の前の方の内側の皮膚が傷ついて出血することがほとんどですが、特に子供ではこの部位の皮膚が薄く、また血管が豊富なためちょっとした刺激で容易に出血します。大人と違って、お子さんでは鼻をいじることが多く、感冒やアレルギー性鼻炎があるとこの傾向を助長することになります。一旦止血しても、かさぶたでとまるだけですから、いじると再び鼻血がでるといったパターンです。もちろん白血病、再生不良性貧血や血小板減少性紫斑病のような血液の病気でおこることもあるのですが、これらの病気の頻度が極めて低いこと、また容易には止血できないことからも比較的簡単に区別できます。
鼻血が出始めたときの処置ですが、まず興奮をしずめて座らせ、そして鼻翼(鼻の先の柔らかい部分)の両側を親指と人差し指ではさんで圧迫し、口へ流れてきた血液は外に吐き出させて下さい。飲み込むと気持ちが悪くなり、嘔吐の原因となります。こうして、3〜5分間押えればほとんどの場合は止血できます。つめものは、はずすとかさぶたがとれて再出血の原因となりますのでやめましょう。これで簡単に止まらないときや、あまりに頻回の場合は耳鼻科的に処置をしてもらうと良いでしょう。 |
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| 第10回 |
| ≪第26号 1997.7.1発行号より≫ |
頭部打撲 頭を打(ぶ)った
お子さんが自転車から落ちて頭をうった。テーブルから落ちて泣いていたが、どこをうったかはよくわからない。こんなエピソードがみなさんありませんか?今回は頭部打撲についてのお話しです。
2階以上の高いところから落ちたり、自動車に衝突したりした時は、当然ながら骨折や頭蓋内出血の危険が大きいので病院を受診して下さい。困るのは上記のようなエピソードだと思いますが、畳の上でころんでも頭蓋内出血を来すこともあり、一概に大丈夫でしょうと言ってしまえない困った出来事なのです。
このような場合、私達は診察をしながら@意識がはっきりしているかA嘔吐がないか。あれば事故との時間がどうか、そしてひどくなる傾向にあるのかB手足は普通に動かしているか。といった点を注意深くみていきます。嘔吐はあっても、意識もはっきりして一般状態が悪くないときは脳震盪の可能性が大きく、意識障害や痙攣などに注意してもう一日経過観察を行います。その日の内に悪化していくなら頭蓋内出血を疑い即刻病院へ入院、検査となります。ただし、少量の出血が続いた場合は、一週間程度たってから症状がでることもあります。この間は、旅行などは控えて、過激な運動も避けて、経過を大事にみていく事が必要です。上に述べたことは一般論ですが、このようなエピソードは子供にとって日常茶飯事なので、そのたびに病院へ行ってCT検査を行うのは、安全第一とはいえ過剰反応、過剰検査ではないでしょうか。ご自分で考え、判断されることも大切と思いますが、みなさんはどうお考えでしょうか。 |
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| 第9回 |
| ≪第25号 1997.4.1発行号より≫ |
水ぼうそう
今回はみなさんもご存知の水ぼうそうについてのお話しです。
正確には水痘といって、帯状疱疹ウィルスによってひきおこされる病気で、流行年とか流行シーズンなど波のあまり見られない一年中見かける病気です。帯状疱疹も同じウィルスで起こる病気で、以前かかった水痘のウィルスが生き残っていて、後日いたずらをするものです。ですから、成人の帯状疱疹からお子さんに水痘がうつることもあります。
水をもったブツブツが体中にできてかゆいのですが、お子さんでは熱がでることも少なく、合併症も少ない病気です。ただし個人差が大きいので、ひどいブツブツと高熱を伴う例もあります。おたふく風邪の時も説明したように、成人では程度がひどく、高熱を伴い入院することもあります。肺炎や脳炎を併発し死亡するようなこともありますので、成人では楽観できません。感染力が極めて強いので、通常は子どものうちにかかるのですが、近ごろは少子化のあおりか、水痘に罹患していない大人が増えているように思われます。
最近ではゾビラックスという名の、水痘ウィルスそのものを退治する薬が使用できるので、積極的に治療すれば軽く抑えることが出来ます。値段が高いのが難点ですが、保育園、幼稚園や学校を休む期間を確実に短縮できますので、主治医に相談すると良いでしょう。
水痘はムンプスなどと違って接触してからでも、ワクチン接種やゾビラックスを前もって飲んで予防したりすることも可能です。また、検査もツベルクリンに似た特殊な方法で行えば、今までにかかったかどうかも確実にわかります。この検査は行っている医療機関が極めて少ないのでご希望の方は当院へお越しください。今回は古くて新しい病気水ぼうそうについてでした。 |
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| 第8回 |
| ≪第24号 1997.1.1発行号より≫ |
インフォームドコンセント、こんな言葉を最近よく耳にしませんか?
一般的には、重い病気の手術や薬物療法に際して、医師からその診断と治療、予想される結果などを十分に説明して納得していただくことをいいます。しかし日常行われている外来診療でよく見かけるような病気でも、やはりしっかり説明を受けるほうがよいのは言うまでもありません。私も含め大多数の医師は当然そのようにして、良い協力関係の中で治療を進めたいと思っています。
ところが、一方では待ち時間か長いことが患者さんの不満の第一と言われます。この両者は相反する性格を持っており、ひとりに十分な診察と説明で時間をとれば、他の患者さんはそれだけ待つ時間が長くなります。
我々はこのジレンマに悩むわけですが、この言葉がやってきた欧米では事情が大きく異なります。一人の医者が一日に診察し説明にあたる患者さんの数が日本の約数分の1と少ないからです。これらの国では一般的に医療費が高いため、受診する患者さんが日本に比べて大幅に少なく、一方それに対する医者を含めた医療関係者の数が多いことがその原因と思われます。したがって、今の医療制度のもとでは十分なインフォームドコンセントをとりながら治療を行うことは残念ながら困難といわざるを得ません。
現在の医療制度でも、保険本人の自己負担を増やし、老人医療も定率にせざるを得ないと厚生省は考えている位ですから、前述のジレンマを解決し理想的な医療を実現しようとすれば、国民総医療費を大幅に押し上げる事になるのは必須です。現在30兆円近い巨額の医療費ですが、これは反面パチンコ業界の年間売上より少ない額でもあります。この医療費を多すぎると考えるのか、もっと医療負担を増やしてでも理想的な医療を受ける方を選ぶのか、皆さん方が考える時ではないでしょうか。
ただし、患者さん方が不必要な受診を減らしたり、医療側が無駄な検査や投薬を慎む努力をしていくことは、行政改革と同じで当然の事です。
今回は少しむずかしい話になってしまいましたが、近い将来にわたって大きな問題となる医療制度の一面を取り上げてみました。 |
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