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小児科クリニック
小児科医である上田憲さんによる身近な病気(子供から大人まで)のお話
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第7回
≪第23号 1996.10.1発行号より≫

 今年の夏はO157騒動で始まり、解決がつかないまま子供達は二学期を迎えました。今回はO157を含む食中毒についてです。以前ウィルス性の胃腸炎についてはお話ししましたが、食中毒とは普通の食事を介して感染する細菌性の胃腸炎をさします。食中毒は、一般的には夏の病気のように思われていますが、腸炎ビブリオを除く病原性大腸菌(最重症型がO157)、サルモネラ、キャンピロバクタ、黄色ブドウ球菌などの細菌性胃腸炎は一年を通して時々見かける病気です。いずれも血便をともなう下痢、嘔吐、発熱などが主たる症状ですが、これらの所見に少しずつ特徴があり、感染源も牛肉、生卵、鳥肉、調理者の傷とさまざまです。しかしO157のように命にかかわるほど重症になる例は他の胃腸炎では稀ですから、神経質になりすぎないほうが良いでしょう。ただし予防が肝心なので、加熱調理をするものは確実に行い、まな板や包丁などを丁寧に水洗することはいうまでもありません。
 下痢や嘔吐が見られた場合、発症のはじめから特徴的な血便が伴うとは限らないので、診察の時点で正確な診断が出来ないこともあります。つまり以前お話ししたウィルス性の胃腸炎とは必ずしも鑑別が簡単でないという意味です。したがって食養生しながら、便の性状に気をつけて、状態が悪くなっていったり血便が見られるようなら、その時点で再診をうけることです。
 ちなみに今回のO157感染は、給食のシステムにのって感染がおこったために患者数が膨大な数にのぼりましたが、一つの感染源からおこったエピソードの数そのものは例年とさほど変わりがないそうです。

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第6回
おたふく風邪 ≪第21号 1996.4.1発行号より≫

 みなさん、おたふく風邪をご存知ですね。昨年末からお子さんの間で流行していますので、この機会に少し勉強して頂くことにしましょう。
  耳たぶの下がはれて、おたふくのお面にそっくりになるためこのような病名がつけられますが、正確には流行性耳下腺炎といいます。耳の下に加えてあごの下がはれることもよく見受けられます。原因はムンプスウィルスの感染でおこりますが、耳の下がちがった原因で同じようにはれることもよく見受けられ、その場合原因によって反復性耳下腺炎、耳下腺炎など別の病名がつけられます。これらをおたふく風邪と確実に区別することは、採血検査をする以外に方法はありませんから、何度もはれるような時は偽物も混じっているということになります。
  お子さんでは軽くすむこともあって、見た目ではわからないような例すら30%程度あると言われています。
しかし睾丸炎(成人では20〜35%)、髄膜炎(10〜20%)、高度の難聴(片耳のことが多い)や後遺症の可能性もある脳炎のような重篤な合併症(1500〜5000人に1人)もあり必ずしも軽い病気とはいえません。特に中学生以上では合併症の危険が急速に高くなり注意を必要とします。一旦かかってしまうと、これらの合併症を確実に防ぐことは出来ず、ワクチンによる予防のみが有効な方法です。
  ワクチンでは1000〜2000人に1人位の割合で髄膜炎がおこるとされ、最も心配されるところです。しかし今のところそのための後遺症の報告はないようです。先に述べた合併症のうち髄膜炎以外の副作用はありませんから、中学生以上でまだかかっていない人はワクチンの予防をぜひおすすめします。なお大人でもワクチンは受けられますので、お子さんから移って悲惨な状態にならないように注意をしましょう。

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第5回
予防接種 ≪第22号 1996.7.1発行号より≫

 最近は公費でできる予防接種も多くなり、現在静岡市では、BCG、ポリオ、三種混合、麻疹、日本脳炎が無料で接種可能となっています。厚生省のエイズなどの対応をみると、必ずしも間違いのない行政ばかりが行われているとは限りませんが、今回はこれらの予防接種について基本的な考え方を私なりにまとめてみました。
 まず予防接種がどうして開発されたか考えて下さい。感染症の中には、根本的な治療法がなかったり、後遺症が残るような重症になっても対処できない疾患があります。しかも、自分だけでなく他人に感染し迷惑をかけることにもなります。もしこれらを予防する方法があれば、そのための合併症、費用とその予防効果のバランスのうえでワクチンが広く行われるのは当然のことと思われます。
 例えば麻疹や百日咳は、わが国でも予防接種のなかった昭和22年頃はいずれも年間1万人死亡していました。麻疹は現在でも世界中で百万人死亡するといわれています。しかしわが国ではワクチンが乳児期に接種されるようになって、死亡例は現在麻疹で数十例、百日咳は10例前後と激減しています。しかもこれらはほとんどワクチン未接種の人です。ワクチンの合併症がマスコミに取りざたされますが、確実でなくてもワクチンが原因かもしれない死亡例も含めて、それでもそれぞれ1年に1人はないと思われます。マスコミでは合併症のことをセンセーショナルにとりあげますが、行われなかった場合の危険は記事として同時にのせることはしません。その危険を考えると私達小児科医はとんでもないことと憤慨しています。例えば昭和49年と50年に三種混合ワクチン接種直後の死亡例があったため一旦中止したことがあります。このため百日咳の死亡例が年間ほぼ0から急増し、54年には50例近くとなったことがあります。 
ワクチンはもともとの病原菌やウィルスから作りますから、場合によってはもとの病気の性格が少し残ることはやむを得ないと思われます。弱くし過ぎれば免疫がつかず、弱くし足りなければ症状がでますので加減が肝心ということです。しかし現在使用されているワクチンは、上に述べたバランスがうまく作られて使用を許可されているものです。
 マスコミ(特に週刊誌は全くあてにならない)の記事をあまりうのみにせず、何でも相談出来る主治医をぜひおつくり下さい。予防接種だけでなく、病気の治療も同じです。
 今回は力が入って少し長くなりました。

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第4回
手足口病  ≪第19号 1995.10.1発行号より≫

 今回は少し時期が遅くなりましたが、夏によく見かける病気についてお話します。
 手足口病をご存知でしょうか?手のひらと足の裏に小さな白い米粒のような水泡が出来て、口の中に口内炎が多発するウィルスの感染症です。熱がでることもありますが、せいぜい一両日で解熱する軽い病気ですが、まれに髄膜炎をおこすことがあります。高熱が続き頭痛を訴えたり嘔吐するようなら病院でみてもらいましょう。よく似た病気にヘルパンギーナがあります。口内炎は手足口病より程度がひどく、熱も高熱が3、4日続きます。両者とも痛みのために食べれなくなりやすいので、シャーベットやスポーツドリンクで脱水を予防するとよいでしょう。いずれも原因となるウィルスが4、5種類あるため、何回もかかる可能性があります。時には一夏に二度かかることも見受けます。 
 熱の病気としては、今年流行しましたが、咽頭結膜熱がさいたるものです。冬場のインフルエンザのように39〜40度の高熱が4、5日間、場合によっては1週間続くこともあります。熱以外に咳や鼻汁などの症状がなく、プールの水を通して感染すると結膜炎を合併します。このため俗称としてプール熱といわれますが、気道感染だけの場合は結膜炎を伴いません。潜伏期間が4、5日間と比較的長いため、兄弟では一人目がやっと解熱した日から二人目が発熱し、二人で10日間の熱となるケースも珍しくありません。
 これ以外にも夏場は、熱と発疹の組合せや、軽い鼻汁、下痢などに頭痛、嘔吐を来す無菌性髄膜炎など多彩なウィルス性疾患が見られます。
 どの病気も症状がおさまってすぐは感染能力がありますから、3日程度たってからお友達と遊ばせて下さい。出来れば主治医の診察をうけて指導してもらうのが最もよいでしょう。

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第3回
マイコプラズマ肺炎  ≪第18号 1995.7.1発行号より≫

 みなさん、マイコプラズマ肺炎をご存知でしょうか。4年毎のオリンピックの年に流行するとされてきた感染症ですが、今年の春からひさびさの流行となっています。マイコプラズマという名前の微生物による感染症で、高率に肺炎を合併するため、幼児、学童から大人まで、発熱とがんこな咳をきたします。一方乳児には少ないとされています。本症は感染しても風邪症状程度の軽い人から、一週間以上も熱が続き、ひどい肺炎をおこしたり、また髄膜炎や心膜炎、中耳炎などを併発したりと症状や重症度に極端に差があるため症状が画一的なインフルエンザなどとちがって診断は必ずしも簡単ではありません。確実な診断は、胸部レントゲン写真をとったり、採血して検査を行うことによって可能ですが、軽症の例や、有効な抗生剤を早期に使用して簡単に治ってしまった例では検査を行わないため、確実な診断は困難です。むかし「肺炎で亡くなった」といわれたような種類の重症の肺炎とは違って、本症は有効な抗生剤がありますから、通常は外来通院で治療が可能です。しかし、前述のように合併症もバラエティーに富んでおり、入院治療が必要となることもあります。
 幼稚園、学校および職場などで感染が広がりますが、軽症では通常の風邪と区別がつかず、また診断がはっきりした例でも症状がひどくなるまえに感染力はあるので、絶対的な予防の方法は困難と思われます。手洗いをしっかり行い、熱がなくても頑固な咳が続いたら主治医を受診して早く治して下さい。

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第2回
スギ花粉症  ≪第17号 1995.4.1発行号より≫

 今回は、お悩みの方も多いスギ花粉症についてです。わが国で最も多いと思われるアレルギーの病気で、全人口の10%前後といわれています。花粉症では、春先のスギ花粉症が有名ですが、その他の樹木や雑草でも花粉症はおこります。ですから春先以外に鼻づまり、鼻汁がひどいときは、検査をうけると原因が見つけられます。昨年の春はスギ花粉が例年の約10分の1と極めて少なく、今年は例年の倍以上と患者さんには憂鬱な年となっています。
  治療は、この時期の外出をひかえる、マスクを着用するなど花粉を避ける努力をまず行うことですが、薬を上手に使うことでかなり楽に過ごすことが出来ます。耳鼻科がおもに治療を行うことになりますが、内服薬による治療は内科や小児科でも可能です。命にかかわることはありませんから、効果が優れていても副作用の危険のあるような無茶な治療は勧められません。まず抗アレルギー剤といわれる予防薬を内服し、点鼻薬や点眼薬を併用すれば、かなり重症の人でもコントロールは可能です。もちろん程度の軽い人では、使用する薬を減らすこともできます。また、毎年決まった時期に発症するので、来年からは症状がでてしまう前に治療を開始する方が効果が確実です。こうして毎年花粉症のコントロールをしていくと、程度も年をおうごとに軽くなり、コントロールもさらにしやすくなります。
 スギ花粉症の方の半分以上がきちんと治療を受けていないといわれますが、一度主治医に相談されたらいかがでしょう。

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第1回
インフルエンザ  ≪第16号 1995.1.1発行号より≫

 そろそろインフルエンザ流行の季節です。
昨年は十年に一度あるかないかといった非流行の年で、私の小児科でも平成1年の開院以来もっともひまな冬を過ごしました。今年は昨年の反動で流行が心配されます。みなさんご用心下さい。今回はそのインフルエンザについてお話します。
 1918年に流行したインフルエンザはスペイン風邪といわれ、世界中では6億人が感染し、2000万人以上が死亡したといわれています。近年は医学の進歩で死亡することは少なくなりましたが、感染を麻疹などのようにワクチンで完全に予防することは、現時点では出来ません。これは、ウィルスの進入から20−50時間で症状が出現するため、ワクチンで防御する時間的余裕が少ないためです。麻疹や水痘は、発症までに約14日間のウィルス増殖の期間があるため、ワクチンがこの間に働いて増殖を抑えるのです。
 ではインフルエンザワクチンが全く無意味かというと、発症した後、重症化したり合併症を起こすことを減少させる効果はあるようです。ですから、お年寄りや受験生のような方は接種するとよいかもしれません。
 現時点で出来ることといえば、過労をさけて体調を維持し、手洗いを心がけることで感染を減らすことができます。それでもやはり感染したら、主治医の指示のもと、学校や職場は休んで安静を保ち、他人への感染を広がらないように注意しましょう。無理してでて行けば、当人の回復がおくれるばかりでなく、他人に感染させて、嫌がられるのがおちでしょう。

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